黄泉送り ~3人の悪霊と1つの願い~
▽真夜中の襲撃

 帰宅した俺は玄関で母親に捕まった。

「一晩中どこに行ってたの!!」
「どれだけ心配したと思ってるの!!」
「雅治、聞いてるの!!」

 矢継ぎ早に放たれる言葉は今の俺に届くはずもなく、空虚に霧散する。

 部屋に戻ると、崩れる様に座り込む。
 やるべき事は決まっている。今夜来るはずの少女を、この手で成仏させる。

 しかし、再びここで重大な問題に直面する。
 どうやって成仏させるのか?最大の問題だ。一般人の俺に特殊な能力など無い。まして、悪霊退治の方法など知るはずもない。

 床にゴロリと大の字に寝転ぶ。
 そもそも、退治ではなく成仏だ。
 違いは分からないが、何か違う気がする。
 そんなことを考えているうちに、いつの間にか眠りに落ちていた。

 どれくらい眠っていたのか、目が覚めると窓の外は茜色に染まり始めていた。その景色を目にし、俺は反射的に起き上がる。夜が近い。何も分からないまま、夜を迎えてしまう。
 焦る俺の脳裏に、朝出会った女子高生の顔が浮かぶ。瑠衣、彼女の家は代々霊能者だと言っていた。

 ポケットから転がり出ているスマートフォンを拾い上げ、今朝知ったばかりの番号を鳴らす。4コール目で、彼女の声がした。
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