黄泉送り ~3人の悪霊と1つの願い~

「その通りです──」

突然背後から声がし、ゾンビと言えるヒトガタの頭部に何かが貼り付く。暗くてよく分からないが、七夕の笹に飾る短冊の様だ。

「滅っ!!」
声が真横から聞こえたと思った瞬間、短冊が青白い炎を上げて激しく燃え始めた。そして、ヒトガタが跡形も無く消える。短冊ではなく、御札だ。

何が起きたのか全く分かっていなかったが、俺の前に進み出た人物を見て理解する。その人物は巫女装束を身にまとった少女だった。理由は不明ではあるが、本職の除霊士が悪霊を祓いに来たのは間違いない。


「瑠衣・・・瑠衣!!」
俺の声に瑠衣が顔を上げる。

「お前はそっちに行っちゃいけないんだ!!」
瑠衣が無言で頷き、力を入れてその場で踏ん張る。抵抗されたヒトガタがガクリと態勢を崩した。同時に一気に燃え上がる。

俺はすかさず這いつくばる瑠衣の元へ駆け寄り、抱き上げる様にして出口の方に連れて行く。

「・・・ったく」
瑠衣の顔を覗き込む。瑠衣は一度グッと目を閉じ、カッと目を開いて俺を睨み付けた。
「何馴れ馴れしく触ってるのよ」
「え・・・?」
「何上からモノ言ってるのよ!!」
「あ、いや、ゴメン」
「フン!!」

いつもの調子に戻ってる・・・


 


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