君と金魚、夜





「待ってください!名前教えてください!」




お腹から声を出したのはこれが何年ぶりだった。




「言わなかったっけ?水希の名前は聞いたのに。俺は鈴波」


「鈴…波…さん…下の名前は?」


「洸人、どうとでも呼んでいいよ」


「洸人さんって呼んでもいいですか?」


「うん」




微かに洸人さんが笑う。


その時あたしが乗る電車の発車時刻になった。




「今度こそ、じゃあね。水希ちゃん」


「おやすみなさい、洸人さん」




あたしは電車に乗り込んだ。





< 60 / 250 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop