君と金魚、夜
「待ってください!名前教えてください!」
お腹から声を出したのはこれが何年ぶりだった。
「言わなかったっけ?水希の名前は聞いたのに。俺は鈴波」
「鈴…波…さん…下の名前は?」
「洸人、どうとでも呼んでいいよ」
「洸人さんって呼んでもいいですか?」
「うん」
微かに洸人さんが笑う。
その時あたしが乗る電車の発車時刻になった。
「今度こそ、じゃあね。水希ちゃん」
「おやすみなさい、洸人さん」
あたしは電車に乗り込んだ。