視界の端の黒い靄 ~ MOYA ~

そう文句を言った私に、大輔は突然、

チュッ…

と、キスをしてきたんだ。


「…っっ?!?!」


驚く私を見て、大輔は満足そうに微笑んだ。

大輔はその後、私の両手を握り締めて、
『俺じゃあ頼りないかもしれないけど、俺は、香歩の気が少しでも紛れれば…それでいい…。』
と、私の耳元で囁いた。


「大輔…。」


大輔は大輔で、長田さんと私の理解出来ない会話に不安を感じていたはずなんだ。

自分の事を話していたんだから。

だけど、大輔は私に何も聞かないで私を気遣ってくれている。


その大輔の優しさが嬉しくて…


苦しかった…



「…ありがとう。」





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