forget-me-not







辺り一面、どんよりとした重い空気が漂う。
鬱蒼とした木々に守られるように佇む一軒の不気味な洋館…。


当時は美しく立派な屋敷であったのだろう。
今では、その栄華の残骸が無惨な姿で残り、“幽霊屋敷”と成り果ててしまった。


錆び、劣化しても尚、原型を留める鉄の門は、訪問者を誘うかのように開いている。
門が風に揺れて奏でるギィギィという不快な音は、屋敷の悲痛な嘆き…。





「―――噂以上の不気味さだね…」


洋館を前に立ちすくむイオは、ぽつりと言葉を紡いだ。

一体先程までの自信とテンションはどこへ行ってしまったのだろうか。
その顔は、引きつっているように見える。


「薄暗いな…まだ昼間なんだが。


見たところ…古いとは言え民家みたいだから、勝手に入ったら不法侵入だな…。

イオが大好きなお宝もなさそうだ。
引き返した方がいいんじゃないか?」


心の中では突入反対派のウルドは、イオを諦めさせようと試みる。


(こんな古く、気味の悪い建物…。きっと中はカビやほこりだらけに違いない。
床だって腐っているかもしれないから危険だ…)


やはり、ウルドの観点は少しずれているのかもしれない。




「うーん…でもさ、ウルド。
せっかくここまで来たのに…」


イオは引き返すのを渋っている。

言い出しっぺは自分なのだ。ここまで来て引き返すようでは、面子丸潰れだ。



「ほら、引き返…」
「うん、突入しよう。
ここで引き返したらきっと私後悔すると思う」


ウルドの声を遮るイオの決意。
ウルドは包帯の下、目を丸くする。



「えっと…、怖くないのか…?」

恐る恐る尋ねるウルド。
しかし、イオの瞳は決して揺るがない。



「そんな怖いとか言ってられないよ。
もう、幽霊なんてどんと来いだしっ。

いざ、ゴーストバスター」

すっかり先程のやる気を取り戻したイオ。
こうなってしまえば、ウルドはもう従うしかない。


「仕方ない…。イオがそうしたいなら……」

へたれなウルドは、ひょこひょことイオの後へと続いた。

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