こらしめ屋



そんなある日、四季がひょっこりと事務所に顔を出してきた。

四季と会うのは、綾瀬家の件以来だ。



《カラン、カラン》



と、真夏の暑い空気を震わせる鐘の音が、奥の部屋に居たあたしにも微かに聞こえた。



「春花…いる?」



そうたずねた四季に、初めに対応したのは和樹だったらしい。

運悪く…ね。



「は?春花に何の用だ?」


「ちょっと話したいことがあってさ。」


「春花はいねーよ。」



そこで、ようやく奥の部屋から出て来たあたしは、急いで和樹と四季の元へと駆け寄った。



「ちょっと和樹!勝手に居ないことにしないでよ!四季、ごめんね?」


「いや、気にしてないよ。」



この瞬間、和樹の人間関係センサーが発動した。



「ちょっと待った。四季って、こいつのことか?杉崎じゃねーの?」


「え?言ってなかったっけ?四季の本当の名字は、綾瀬なんだよ。綾瀬四季。」


「だからって、何で下の名前で呼んでんだよ。」



< 240 / 290 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop