「ねぇ米山くん、どうしてそんなに不細工なの?」
「だから、どうやって竹之内さんにこの話をもっていくの?」

「確かに……」

浩平はうーんと唸るような息を吐き出して考え込んでいる。

「ありのままを話すしかないよな? 相手が誰だろうと、騙すようなことだけは絶対しちゃダメだもんな」

「そしたら竹之内さん、絶対のってこないよ? だって彼女、妻より愛されてるっていう優越感に浸っていたいんだから」

「別に、断られたら断られたでいんじゃねーの?」

「ああ……間違いない。なんでこんな必死になってんだろ。バカバカしい」

「そこまで我に返らなくても」

浩平が苦笑しながら言った。



浩平の提案で、宇留野さんの写真を見せて竹之内さんを誘ってみようということになった。宇留野さんは相当なイケメンだから、その方が成功率が格段に上がるだろうと。

次に宇留野さんと同じ勤務になった時、渋々声を掛け、先日の非礼を詫びた。

「全然気にしてないって。米山さんが怒るの当然だし」と、宇留野さんはあっけらかんとしていた。本当に気にしていないみたいだった。恐るべしメンタルの持ち主。

事情を話すと、これまた快く写真を撮らせてくれた。



帰宅後、浩平の携帯電話に宇留野さんの写真を送った。浩平は送られたそれをまじまじと見ながら、

「改めてじっくり見ると、ほんとにすごいイケメンだな」

「一切着飾らずにソレだもん。正真正銘のイケメンだよね。遊ぶ女ぐらい、いくらでもいそうなのに」

「遊ぶ女はいくらでもいるかもだけど、あと腐れなくこっち都合で別れてくれるかって言ったら難しいだろうな」

「そういうことか」

「そういうことだ」

二人して笑い声を漏らす。何が可笑しいのか謎だけど、悪代官と悪徳商人のやり取りみたいだと思った。「お主もワルよのう」「いえいえお代官さまほどでは」ってやつ。

私たちがやろうとしていることは、果たして悪なのだろうか。
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