「ねぇ米山くん、どうしてそんなに不細工なの?」

〔LOVE&PEACE〕

なんとなーく月日は流れ、宇留野さんと梅森さんはめでたく付き合い始めたそうだ。浩平も、もちろん尽力したけど、なんと、竹之内さんも一役買って出たらしい。

最初は頑なに断り続けていた梅森さんだったけど、二人がかりでの執拗な説得により、とうとう浩平たちに軍配が上がった。

宇留野さんが『聞けたらでいいんで』と言っていた梅森さんの連絡先。二人は半ば強引に了承を得て、私から宇留野さんに伝えた。当たり前だけど、彼は手放しで喜んだ。


日常は繰り返される。


早川さんは宇留野さんが『クズ』じゃなくなったことを非常に残念がり、これからは『滲み出る優しさと包容力、そして大人の余裕』を兼ね備えた『米山さんの旦那さんみたいな人』を探すんだと、瞳を輝かせながら今の意気込みを語った。


「それは看護師さんの仕事だから」が口癖の花村さんは、今日も自分の仕事だけをひたすらこなしている。対する私は看護師さんたちから引っ張りだこだ。『米山さんがいてくれて助かる』とか、『今日米山さん出勤だ! ラッキー』とか言ってもらえて、気分がいい。

だけど、看護師さんの手伝いをしてから戻ると、

「どこ行ってたの?」

と、花村さんがものすごい剣幕で詰め寄ってくる。

「清拭を手伝っていました」

「私たちには私たちの仕事があるのよ! それを私一人でやれっていうの?」

「花村さんの手が空いてるならやってくださいよ。看護師さんに頼まれたら断れないです」

「あんた、何様なの? はっきり断らないから看護師にいいように使われるのよ。もう少し頭使いなさいよ」

この言葉にはさすがにカチンときた。

「いいように使われてるなんて思ったこともないですけど。仕事って連携プレイだから、協力してやったらよくないですか? それぞれの役割をガチガチに守って、それしかやらないなんて、それこそ効率悪いですよ」

私たちが看護師さんに助けてほしい時だってあるじゃないですか、と続けたが、花村さんは最後まで聞かずにプイとそっぽを向いてその場を立ち去った。

「なんか、ごめんね」

弱弱しい声が背後から聞こえたので振り返ると、看護師さんが三人、申し訳なさそうな表情を浮かべて立っていた。そのうちの一人、向山さんが、

「あの、盗み聞きするつもりはなくて、聞こえちゃったんだけど……米山さんがあんな風に責められるなら、私たちこれからは……」

本当に申し訳なさそうに言う。私のことを心から気遣ってくれているのがわかって、逆にこっちが申し訳ない気持ちになる。


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