花散里でもう一度
阿久はそう言うと後も見ず岩屋を出て歩き出した。
俺が後を追って行くと疑いもし無いその後ろ姿に苛立つ。
未だ逡巡する胸の想い。

……血に塗れた手しか持てないのはお前だけじゃない。
その血塗れの手で愛しい妻を子を抱き締める。
それは許されるのだろうか。
無垢なる物たちを汚すのではないかと、恐ろしくてならない、それを恐れる俺は自分からはもう手を伸ばす事が出来ずにいるのに。
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