夏のお供の複雑な事情
その姿を見て、量販店の安売り用に作られた、最低限の機能しか持たない扇風機が舌打ちをしました。


「何をそんなにはりきってるんだよ。

全くうるせぇな」


最新型くんは、安売りくんの口の悪さが恐くて思わず謝りました。


「ごめんなさい。

早く人間の役に立ちたいから、つい……」


「お前はただでさえ目立つんだ。

それ以上目立ってもらっちゃあ、オレらは見向きもされねぇよ」


ほかの扇風機と窮屈に並べられている安売りくんは、首も振れずにただ弱々しく溜息をつきました。




「そっか、きみも買ってもらいたいって気持ちは同じなんだね」


「あたりまえじゃないか。人間を涼しくするのがオレたちの役目だからな」


「うん。きみも僕も、早く買ってもらって使命を全うしたいね」
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