マー君(原作)
「あれがそうだろ、冥界に続く入り口ってさ」

洋太が虫かごを足元に置き、前方に見える小屋を指差す。その小屋はトタン屋根にさび付いた壁、夕日を浴び更に古びて見えた。

学校ではかなり有名な建物だが、誰も近づこうとしない。それが怪談というものだが。

間宮は小屋から、洋太達に目を移した。すると、洋太が何か見つけたのか、小屋を見て大きく目を見開いていた。どうしたのかと、その方を見ると、小屋に――。

白い仮面を付けた少年が立っていた。

彼は間宮達と同じぐらいの歳だろう。背丈が低く、私服に顔に仮面をつけてこっちを向いている。

間宮はその少年を見て、思い出した。

彼が何者なのかを。

気付いたら、口にしていた。

「マー君」

そう言った途端、マー君が首を左右に振った。

「おい、あれ」

洋太がマー君に近づこうとしたが、間宮は洋太の腕を掴み引き止めた。その間にもマー君は小屋に消えていく。

「いいんだ、もう。僕達が来れるのはここまでなんだ」

マー君は間宮の言葉に反応するように肩越しに振り向くと、小屋の中へ消えていった。

そう、これでいいだ。僕らは踏み込んではいけないんだ。

過ちを繰り返さないために。

もう、いいんだ。

間宮は自分に言い聞かせ、その消えていく背中を寂しく見送った。

僕は逃げない。もう、二度と。
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