淡い初恋
土曜日、記念すべき私たちの初デートは渋谷だった。10時、ハチ公前で待ち合わせのことだったが約束の時間よりも少し早めに龍くんは到着し、待っていた。渋谷は人混みが凄くて煩雑してるけど、探さなくてもすぐ彼を見つけることが出来た。なぜなら彼が人混みの中でも一際目立つオーラを放っていたから。ストゥーシーのお洒落なT-シャツにGパン、dieselのリュックサックにと、見た目もお洒落だから一瞬モデルさんかと思った。だから余計、話しかけづらくてまごまごしていると龍くんが近づいて駆け寄ってきてくれた。

「おはよう!何迷ってるんだよ!」と笑顔で声をかけられた。「あ、いや、その。」と口ごもる。さっきとは打って変わり明らかにがっかりした周りの反応が凄く痛い。イケメンの素敵な男性の彼女が地味女。「え~私の方が可愛いのに。」とか「声かけようといたのに彼女いたんだ。」とかそんなひそひそ話が聞こえてくる。だけど、そのことには全く気づかないのか龍くんは気にせず話しかけてくる。

「そのワンピース可愛いな!」「あ、ありがとう。でもこれ、セール品だったの。80%引きだったの!」と安くゲットしたことを誇らしげに言うと「安っぽい女。」とボソッと聞こえた気がした。だよね、みみっちいって龍くんにも思われたかもしれない。俯いていると、「上映時間もうすぐだろ。早く行こう。」と言われ、私達は映画館の方に向かった。私は自分の胸の内を誤魔化すように「龍くんのそのリュックサックも格好良いね!」と言うと「あぁ、これ?グアムで買ったんだ。しかも限定物だから日本では手に入らないんだよ。」と言ってきた。
凄すぎる・・・・・やっぱ隣で安物着てる自分が恥ずかしくなってきた。


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