淡い初恋
15時過ぎ。思ってたより早めに呼び鈴が鳴った。私は、涙を拭うとチェーンが付いたままの状態で扉を開けた。

「よ、希!遅れてごめん!」彼が明るい笑顔で、右手を上げた。その嬉しそうに無邪気に笑う彼の顔に無性に腹が立った。私は彼を見上げると「ううん、大丈夫。」と小さな声で応えた。私の暗い返事に彼が不審に思ったのか「希?」と私の顔を覗き込みながら聞いてきた。

知らぬ顔の彼に憤りを感じた。浮気してたくせに、図々しいよ、本当。

「ごめん、今日は帰って。」と冷たく言い放つと彼は「え?なんで?」と驚いて聞きかえした。「・・・・・・・」

「どうしたんだよ、急に!?」と聞いてくるため「悪いけど、体調悪くなったから。じゃ。」と言って、扉を閉めようとした。だけど既でドア縁を掴まれ、それを制された。「どうしたんだよ、希!?なんで急にそんなこと言うんだよ。なにかあったのか?」と聞いてくるけど「何もないから離して!!」と言って無理やり彼の指を解くと扉をバタンと閉めた。

ドンドンドン!!
「おい!希!!開けろよ!!希!!」

扉の外から何度も私の名を呼ぶ声が聞こえた。
だけど、その日私は扉を開けることはなかった。
私はその場にしゃがみこむと声を押し殺しながら泣いた。

龍くんのバカ!私だって今日をすごくすごく楽しみにしてたのに!
この張り裂けそうな胸の痛みは全部全部龍くんのせいなんだから!

私の気持ちが分かってくれるまで・・・
謝ってくるまで絶対許さないんだから・・・・・・


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