淡い初恋
「本当は何があったんだよ?」と聞かれたけど私は貝のように口を閉ざした。北沢くんは、ため息をつくと「まぁ、別れてくれて俺はラッキーかな」と言ってきた。「は?」私は彼を見上げて聞き返すと「なぁ、俺と付き合わない?」とからかうように言ってきた。「え、まさか、ない。」と即答すると彼は少し落ち込んだようだった。慰められたのかな?それにしてもあんまり嬉しくなかった。「ごめん、一人になりたいの。」と言うと私は駆け出した。「あ、高梨さん!!」と呼ばれたけど振り返らず私は家に向かった。

次の日の朝、血相を抱えた加奈子ちゃんは私が教室に入った瞬間、駆け寄ってきて「ねぇ、知ってる!?」と聞いてきた。あまりにも声が大きかったため周りの好機な目が一斉にしてこっちを向いた。私は居心地が悪くなり、彼女を連れて廊下に出ると加奈子ちゃんに「何?」と尋ねた。「千堂くん、早坂さんと付き合い始めたんだよ!」と言うので私はすかさず「あぁ、そう。」と応えた。「え!?驚かないの?」と不思議な顔をされたので「前から薄々感じてた。」とだけ応えた。「え?どうゆうこと?」と聞かれたので「前々から仲良さそうだったし」と応えた。さすがに浮気していたとは言わなかったけど、加奈子ちゃんは「そうだったかなぁ?」と言うと首を傾げた。

正直、もうどうでも良かった。私に遠慮してこそこそと二人が逢瀬をする位なら堂々と恋人宣言してくれた方がせいせいする。そう、自分に言い聞かせた。

次の日、トイレに行くと勝ち誇った顔で早坂さんが取り巻き達に自慢をしているのが目に入った。気にせず個室に入ると大きい声で「ってか、昨日私、千堂くんとやっちゃったんだー!」と言ってきた。うそ・・・。「え~マジで?どうだったの?」と聞かれ、「う~ん、初めてだったみたいだからちょっと不器用だったけどそこが良かった。なんか愛を感じちゃったし。」と言ってきた。

まさか、本当に・・・こんな簡単に私のこと忘れて他の女の人を抱くなんて・・・・・。ショックすぎて、思考が完全に停止した。何もしないまま、個室から出ると私は手を洗った。その光景を見ながら早坂さんがつぶやいた。「ごめんね、彼氏取っちゃって。」そう言うと周りもクスクス笑い始めた。「身の程をわきまえないからこうなるのよ。」彼女が続けて悪口を言い続ける。私が彼女を見ると早坂さんの顔から笑みが消えた。

「あなたを見てると本当にムカつくの。もう、千堂くんは私のものなんだから邪魔しないでよね。」と冷めた目で言ってきた。

私は、タオルで手を拭くと何も言い返さずトイレを後にした。
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