淡い初恋
ゴミをかき集め、ちりとりの中に入れる時だった。ドタバタという音が廊下から聞こえて急にガラッと勢い良く扉が開いたのでその方を向くと、そこには千堂くんが立っていた。

「え!?」なんで、千堂くんが・・・。私は持っていたちりとりと箒を落とした。すると私の存在に気づいた彼が突然「あれ?日直?」と聞いてきた。私は動揺を隠すように「うん」と言ってこくんと頷いた。

彼は怪訝そうに「なんで一人なの?」と聞いてきたので私は「早坂さん、用事があるみたいだったので先に帰っちゃった。」と応えた。

やばい、やばい、やばい、どうしよう。千堂くんだよ、千堂くんと話してるよ、私。初めてだよ、こんなの。やばい、落ち着け、私の心臓!!

彼を見ると、私を心配をしているような早坂さんに呆れたような、どっちつかずの表情をしていたため思わず聞かれてもいないのに「あの!私は一人でも大丈夫なので。」と応えた。やばい、笑顔ひきつってたかも・・・。と思って彼を見ているとなぜか見つめられてる気がして一瞬「え?」となった。彼は、なんでもないと言うとすぐ目を逸らし、自分の机の中から教科書を取り出すと鞄の中に入れたようだった。

「じゃぁな!」と言うと彼は教室を後にした。やばい、超格好良い!彼と会話をするなんて初めてだ!!なんて今日は幸せな日なんだろう。いつもは見てるだけだったのに。それだけで十分満足してたのに。でも、話してみたらやっぱり違う。

ちょっと落ち着いた佇まい、しびれるような低い声。沢北くんと話してるときは少し声のトーンが高いため少年のような声と笑顔なのだけど、女子生徒と話す時はクールで素敵。あぁ、私もう彼のことが好きなんじゃん!!どうしよう・・・。止まらないよ・・・
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