深層融解self‐tormenting◆番外編◆

 Phantom of the Italy

去年の夏にクリスに連れてこられたあのサーキット場に、蒼季はアルファロメオを走らせているみたいだ。


狭くてやたらに信号とカーブが多い日本の道とは違い、イタリアの田舎道は信号がなくて快適…ではある。


但しそれは運転手が100キロ以上の速度を出さなければの話だ。


いくら信号が無いからって、飛ばしすぎじゃないですか、蒼季さん?




サーキット場にはギャラリーが結構来ていて。ざっと見れば50人ぐらいはいるんだろうか?


さすがはお祭り騒ぎが好きな人達らしい人の集まり方だよなー。


てか、今からここで何するか、皆知ってるの?



アルファロメオをコースに寄せて、車を降りた蒼季に近づいてきたのは鷹嘴先生だ。


「よぉ。どうよ調子は?」

「悪くない。テムプラは?」

「まだ来てねぇ。凱もまだだ。大体、イタリア人が予定通りに来るわけねぇだろ」


なるほど。うちの兄貴はイタリア人並みだと言いたいの、鷹嘴先生?

でも私から見れば、あなた方も充分ここで生活できそうな性格してると思うけど。



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