オトコの娘。*彼氏、ときどき、女の子!?*
 
ここにいるということは、この人もオトコの娘で、間違いなく葉司の仲間である。

ゆえに警戒して然るべきなのだけれど、メルさんは息までもがバラの香りで、今度は彼……いや彼女か、のフェロモンにめまいがした。

そうして、またもや意識を失いかけていると。


「ところで、まことちゃんはどうしてここへ? 誰か知り合いでもいるの?」


しっかりと体を起こして立たせてくれ、自分のほうにあたしを回れ右させて向き合う形にしたメルさんが、いよいよ本題を口にした。

カラーコンタクトを入れた、ブルーの大きな瞳があたしをじっと見つめている。


「じ、実は、あたしの彼氏が」

「うん。まことちゃんの彼氏がどうしたの?」

「ここで、その……」

「うん、ここで?」


しかし、そこまで話して、どうしてか気持ちのタガが外れてしまったあたしは、「あらあら」と驚くメルさんの胸にしがみつき、わんわんと声を上げながら泣き出した。

どうして今、スイッチが入ったのかは分からないけれど、入ってしまったものはどうにもならず、スイッチの切り方もまた、分からない。

そのうち開店時間になったらしく、耳に「いらっしゃいませー!」という声が入ってくる。
 
< 16 / 343 >

この作品をシェア

pagetop