オトコの娘。*彼氏、ときどき、女の子!?*
そのあまりの世界観に思わず言葉を失い、あちこちをきょろきょろと見渡していると。
「着いたわよ。まことちゃん、降りて」
と、いつの間にか車を降りていたメルさんが、あたし側のドアを開けてくれていた。
「あ、あの……」
「そうね、そうよね。あなたが聞きたいことはよく分かるわ。でも、ちょっとだけ我慢してくれる? 今、美味しいお茶を淹れるから」
「はあ、じゃあ、お願いします」
「素直で可愛い子ね。行きましょう」
「はい」
そうして、車を降りる。
おいおい説明してくれるなら、まあいっか、そう思うあたり、あたしもたいがい、大ざっぱな性格をしていると自分でも思う。
けれど、車の中とは違って、カフェにいたときのような温和なメルさんに戻っているし、頬に切り傷がある執事さんは、車庫に車を戻しにでも行ったのだろう、ここにはもういない。
一番の恐怖はその執事さんだったから、すごく申し訳ないのだけれど、姿が見えなくなってくれただけで、なんだかほっとした。
「適当に掛けて待っててね」
「はーい」
メルさんの部屋は3階にあった。
お茶が入るのを待つ間、乙女チックなインテリアでコーディネートされた部屋の中を、ぶしつけながら、またきょろきょろと見渡す。