オトコの娘。*彼氏、ときどき、女の子!?*
 
あたしはあくまで、葉司が言ってほしそうだったから言っただけで、分からない、という姿勢は貫くものの、それだけは本心ではなかった。

だから言われるのだ、“なんであたしの気持ちを分かってくれないかな、葉司は!”と。


「ぶえぇぇっくしょいっ!」


一通り腹を立て終わると、息が整った代わりにとたんに寒気が全身を走り、あたしは女の子らしからぬ大きなくしゃみを一発かました。

それもそのはず。

厚手のコートを羽織れば外も大丈夫かー、などという安易な考えから、今日のあたしの服装はかなり季節はずれの薄着だった。

しかも、葉司に絶縁状を叩きつけたあと、勢いあまってカフェを出てきてしまったもので、コートはおろか、バッグすら持っていない。


「……ぬぉわぁぁっ!!!!」


悶絶である。

コートは、置き忘れに気づいた葉司が純平に頼みに行き、それを明日、大学で会ったときにでも返してくれるだろうから、まずはいい。

けれど、バッグの中には、携帯やら部屋の鍵やら、大事だから重ねるけれど、部屋の鍵やら、その他もろもろ、たくさん入っている。


「……、……。……まだいるかな、葉司」


戻りにくい。

ものすごーーーーく、戻りにくい。
 
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