オトコの娘。*彼氏、ときどき、女の子!?*
 
ただ、奈々のおかげで日中は愛菜……いや、もう葉司でいいか、のことを忘れられても、それは一時のものでしかなく、布団に入り、さあ寝ようと目をつぶってもなかなか寝つけない。

寝るのは得意なあたしとしたことが、何百匹羊を数えても全く眠くならなかった。


「ねえ、奈々、もう寝た?」

「……」


しばらく待ってみても返事はなく、どうやら奈々は、すっかり夢の中にいるらしい。

耳をすますと規則正しい呼吸も聞こえてきて、念のためにそろりと布団を抜けて奈々の顔を確認してみても、結果は変わらなかった。


「うう……。葉司のアホぉ~」


そこでようやく、あたしは布団を頭からかぶり枕に顔を埋め、声を押し殺して泣きはじめる。

オトコの娘カフェへ葉司の様子を見に行って、果たしてよかったのか、悪かったのか……。

今はなかなか判断が難しいけれど、とにかく涙が止まらなくて、奈々がしっかり寝ているのをいいことに、泣き疲れて眠ってしまうまで、あたしはひたすらに泣いた。


こりゃ、起きたら奈々にびっくりされるな。

でも、明日が日曜日でよかった。

泣き腫らした目では、いくら、もともとがパーチーメガネを掛けたような顔をしているあたしでも、さすがに大学には行けない。
 
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