不条理な恋   理不尽な愛  (ベリカ版)【完】

…手紙

さまよう程、広くない部屋。

それでも生々しい記憶に、私は誰かに後押ししてほしくてフロントに電話をした。

すると帰ってきた言葉は意外なものだった。

「朝食をご用意するように仰せつかっております」

誰から?その言葉が出ないまま受話器をおろし、

人が来たらマズイことに気が付いた私はあわてて身支度をした。


朝食が部屋に運ばれてきて、テーブルに食事が置かれた。

そのまま帰るのかと思うと、

「お連れ様から…」

とミモザの花と手紙がテーブルに置かれる。

「失礼しました」

給仕はそう言って目を見開き放心状態の私を置いて、

静かに部屋を出て行った。


その花は…

それに手紙??

嫌な記憶が蘇る。今ここにも眞人はいない…

それの意味することを何となく空気で感じながらも…

認めたくなかった。

しばらく私はその非現実であって欲しいリアルな風景を眺めていた。


いつまでそうやっていてもらちが明かないことはわかっている…

私は震える手で封筒に手を伸ばし、便せんを取りだした。

視界がゆらゆらと揺れて何も見えなかった…

また私はあからさまに…

そうまたしても私は…


拒絶されるの?


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