不条理な恋   理不尽な愛  (ベリカ版)【完】

…伝言(大希)

昨日彼女は出張先の町で結局一泊した。


「お母さん、今日は帰らないの?」

と俺が保育園に迎えに行ったとき、息子の瑞希は少し不安そうだったが、

「今日は帰れないと連絡があったから、父さんがきた。

せっかくだから、男二人で一晩仲良くしよう」

と夕食はファミレスに行こうと誘うと、

「お母さんお仕事大変なんだね」

と笑顔になり喜んでついてきた。

それから家に帰り一緒にお風呂に入り、添い寝してやった。

年に2、3度はあることなので、俺も瑞希も特には気にならなかった。


「おかえり」

玄関にいつもの光景。いつも見る愛しい人の姿。

昨日1日見ないだけで、こんなに感情を揺さぶられるのに、

よくも10年近く見守るだけで我慢できたものだと思う。

少し離れただけなのにな…

俺ってバカだ。

改めて大切さを噛みしめ、ほのかに手を伸ばす…

その愛おしい躰に触れ、抱きしめようとした瞬間

俺の頭に不快な奴の言葉が流れ込んできた。

『「大希、すまない」』

それを聞いた瞬間はっとして、ほのかを放す。なんで、こいつの声がほのかから・・・

俺は目を見開いてほのかを見た。

何がすまないんだ。あいつは何が言いたいんだ?頭が回らない。
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