不条理な恋   理不尽な愛  (ベリカ版)【完】

…宝物

その後、これがなんだったのかわからず、気になって仕方がなかった躰の赤い痣は、

何とか大希さんに見つからないうちに消えてくれた。

手紙はクローゼットの奥に押し込んで封印した。


花は…

花だけは持って帰る気になれなかったので

泊まったホテルにそのまま置き去りにしてきた。


1日1日が長かった。

それでも時間が経つにつれ、何事もなかったように過ごせるようになった。

それとともにあの日の記憶のないことに抱いた不安な気持ちも

躰の痣と共に徐々に消えていった。

運のいいことにあれ1度きりで手紙の夢は見なかった。


そして、いつもの延長線上、忙しい毎日をおくった。

大希さんと私は仕事。瑞希は保育園。


もうこれ以上何かで不安になりたくなかった。

私の人生は幸せな時間が長く続くことはなく、

どこまでも残酷な事しか起こらなかったから…


そんななか迎えたゴールデンウィーク。

今年は大希さんと私の休みが久々に重なった。

それならと家族3人で泊まりがけの旅行に行くことにしていた。

本当に久しぶりの旅行は子どもが楽しめるものにする予定だった。

それは瑞希との思い出つくりのためでもあった…
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