不条理な恋   理不尽な愛  (ベリカ版)【完】

…変化

その日の夜は別のホテルに泊まった。

昨日はベッドだったので、瑞希は私の方に潜り込んできて寝た。

今日は和室。

布団を川の字に敷いてあったが、日中よく動いたからなのか

添い寝してやると、真ん中の布団であっという間に眠りについた。

「寝たか?」

ドアを少しだけ開けて、小さな声の大希さんがこちらをうかがう。

「うん」

私は頭だけを上げて返事をした。

彼はそっと足を忍ばせながら、部屋の中に入ってくる。

ドアを閉めると、そこは暗闇に包まれる。

瑞希の寝息だけが響く静かな空間…


しばらくすると、私の後ろに大希さんの気配がした。

「大希さんあっち…」

後ろから優しく抱きすくめられる。

背中から熱を移す様に包み込まれると、気持ちの糸が緩んだ。

大希さんは暖かさと安らぎ、そして少しのドキドキを私にくれる。

「いつも一緒に寝ていても、場所が変わると気分も変わるな」

「そう?」

私は目を閉じて背中の大希さんの存在を感じる。

「来てよかったな」

「ええ。来年には小学生だから、もっと色々なところに

一緒に行く機会を作りましょうね」

「ああ。本当に産んでくれてありがとう」

彼にぎゅっと抱きしめられると胸が痛かった。

何度ももう無理かと思った。諦めて開き直ろうとした時もあった。

それでもあの時、諦めなかったからこそ今があるはず…

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