不条理な恋   理不尽な愛  (ベリカ版)【完】

…感受

青白く少し痩せた私に、大希さんが気づかないはずもなく、

何も言わないわけがない。

カウンセリングに行った週末、寝室のベッドの端に腰かけた大希さんから、

「話があるから座れ」

と切り出された。

大希さんの隣に腰掛ける。彼は私の顔をのぞきこむ。

「この頃…

また見てるんじゃないか?」

彼は、私に気を使っているが、おそらくあの夢の事を言っているのだと思った。

「あの夢?

…大丈夫。一度きりだから」


私は彼の目を見てつぶやく。伝わっただろうか?本当にあの夢…

という言葉すら言いたくないし、思い出したくない。

でも、私の言葉で伝えなきゃ。大希さんに心配はかけたくない。

もうこれ以上は…

「でも、何か隠してないか?この頃あまり顔色がよくないし…」

不安そうに私を優しく抱きしめて背中に両腕を回す。

「ほのか、やっぱり少し細くなったよな。

何もないのに、こんなになるか?

仕事?家のこと?他のこと?話して…

まずは言ってくれないと何もできない」

「うん、見てはないけど、見るかもと思うとすんごく不安で…

胃にもきてるみたいなの。

考えすぎなのも、思い込みすぎない方がいいのもわかっているんだけどね…」

背中の手が頭に移り、大きな手が私の髪を撫ではじめる。

「そうだよな。怖くて当然だ。あれだけの思いをほのかは乗り越えたんだから」
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