不条理な恋   理不尽な愛  (ベリカ版)【完】
10

…畏怖

私はあれから会計から呼ばれるまでしばらく待って支払いをし、

いったん家に帰った。

それから夕方瑞希を保育園にいつものように迎えに行き、食事をして、

お風呂に入って、部屋で添い寝をした。


その日の夜、大希さんの帰りは約束の時間よりも遅かった。

どうして大希さんはあの場にあのタイミングで現れたのだろう…

そして病院という多くの人間がいる空間で私を見つけてしまったのだろう…

見つけられなかったら、私はあのまま中絶の予約をして、

そして予約当日に病院に行ったのだろうか?、

何事もなかったように朝、大希さんを送り出して、

みずきを保育園に預け病院で堕胎して…

何事もなかったようにそれからも過ごすことが果たしてできただろうか?

私のこのお腹に宿った命を自分の一存でこの世から葬って、

何事もなかったよう生き続けることができたのだろうか?

たぶんそんなの無理だろう…

でもこの妊娠という事実が…

何か私たちの身に恐ろしいものを招き入れるようで…

コワイ。


これからの事を考えると気が重かった半面、あのまま堕胎する前に誰かに…

大希さんに見つけて欲しかった気持ちもあったのかもしれない…

10時半が過ぎ、そんなことを考えながらぼーっとTVを見ていたら、

玄関の方でごそごそと人の気配がした。

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