不条理な恋   理不尽な愛  (ベリカ版)【完】

…残酷(大希)

あの晩眞人が現れたことは…

もしかしたら幻だったのかと思うくらい、

それから特に変わらない日常を過ごした。

ただ、俺の見たあの閃光。そして底知れぬ不安を感じた事実は…

いつまでもいつまでも俺の奥底でくすぶっていた。


その後、ほのかは暑い夏を超え何とか10ヶ月の妊娠生活を過ごした。

貧血や妊娠中毒症の兆候が出たりはしたが、それも程々で済んだ。

元々瑞希の兄弟を欲しがっていたので、色々と覚悟していたのだろう…

「やっと授かった命だから、私が死んでも産む」

と恐ろしいことを言ったこともあった。

俺にとっては、確かに血を分けた子どもはとても大切なものなのだろうが…

そのことが原因で、ほのかがいなくなるなんて考えられなかった。

それなら、もう子どもなんていなくても別に困らないと思っていた。

だから不妊治療に賛成することはなかったのだから…


「そんな縁起でもない事言うんじゃない。

お前と子どもの両方が元気である事が何よりも大事だろう?」

俺はほのかをそうたしなめた。

出産は、色々手を尽くしたにもかかわらず最後まで逆子が治らずに

母体の年齢も考慮して結局予定入院で帝王切開になった。

俺は分娩室の前で、ただやきもきしながら瑞希と二人で待つことになった。
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