不条理な恋   理不尽な愛  (ベリカ版)【完】
「いや―――――」

その叫び声が部屋中に響き渡り、それが自分の耳に入ってくる。

私はよけいにパニックになり、叫ぶ声のトーンが段々と上がっていく。

その繰り返される不快極まりない音に、私は叫び狂った。


突然勢いよくバン!!

という音がして誰かが私の所に駆け寄ってくる気配がした。

ベッドサイドに寄ってきたその人の顔が視界に入ると、

見たものを信じられない私は目を見開き、叫ぶのをやめた。


「まあくん?まあくん!まあく…

うぅ―――…」

溢れる涙そのままで拭いもせず、

長年の思いを伝えたいのに喉が詰まってうまくしゃべれない。

「あああああああああああああああ…」

私は声にならない叫びをあげながら、うつむき両手で顔を覆ってただ泣いた。


涙が止まるわけもなかった。何十年押し込めていた愛憎の思い。

もうそれが愛なのか憎しみなのかすらわからなかった。

大希さんと暮らして長い月日が過ぎたのに…

家族で暮らす穏やかな日々がこんなに愛おしい気持ちがあるのに…

私の奥底にはこんな激情がまだ残っていたんだ。

それは叶わない想いへの私の執着に他ならなかった。

「今でも誰よりも眞人を愛している」という厄介な感情。

< 95 / 130 >

この作品をシェア

pagetop