消えた同級生【玩具の女編】
「それって、蒼湖の事?」

「そうです」

「今の医療技術でもダメなの?」

「低年齢出産は、高齢出産と同じくらいにリスクが高いんです。女性の結婚可能年齢が16歳の理由も、出産の準備が出来る年齢だからです。流産、早産、高血圧症…普通の人より何かある確率は高い…命を落とす可能性も上がります。」

「…若いから?そんなの…気をつければいい話じゃねーの?」

「では、あなたはもし、彼女が出産で赤ちゃんと引き替えに亡くなっても、子供を愛せますか?」

「…え?」

「彼女の代わりに、子供をきちんと育てられますか?」

「俺が?」

「そうです。あなたは父親です。子育ては一人ではなく二人でするものです。彼女が辛い時はあなたがおむつを替えたり、抱っこしてあげたりするんですよ?それを万が一、一人でする可能性もあるんです。」

蒼湖がいなくて子供なんて…

蒼湖を繋ぎ留める子供なのに…

俺は全く考えていなかった事に気がついた。

命なんだ…一人の人間だった…そんな当たり前の事に気がつかなかった…

「俺、蒼湖と家族になりたかっただけでした…」
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