キミと生きた時間【完】
あなたがくれたもの

「ひ、ひったくり~!!!誰かーーーーー、捕まえてーーーーー!!!」


あたし、こんなに大きな声だせるんだ……。


自分でも驚くほどの大声で叫ぶと、周りにいた人が『なんだ、なんだ』とあたりをキョロキョロと見回す。


だけど、みんなひったくり犯に気付いていない。


必死で追いかけてみるものの、なかなか追いつけない。


焦る思いとは裏腹に、運動不足の足がもつれてひっくり返りそうになる。


このままじゃ、逃げられちゃう!!



「ダメーー!!そこの黒いジャンバーの人ーーー!!止まって!!!!」


再び叫ぶと、慌てたひったくり犯は路駐されていた自転車にぶつかって激しく転んだ。


その拍子にひったくった学生カバンが犯人の手から離れる。


今がチャンス!


犯人までの距離はおよそ5メートル。


あと一歩というところで犯人は立ち上がると、学生カバンをその場に残して悔しそうに走り去った。
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