オアシス・カフェ〜三人のプリンス〜
◇失恋

ある日のバイト帰り。


「あ…澤村さん…」


店を出ると、自動販売機の前に、いつものように清楚な女性らしい格好の澤村さんが立っていた。

卓人さんでも待ってるのかな…

そういえば、今日の卓人さんの格好は、ジャケットを羽織っていつもよりもお洒落だった気がする。

二人の関係を想像して、胸がズキッと痛む。


澤村さんに軽く会釈をして、早足で前を通り過ぎようとすると、「待って」と不機嫌そうな声で呼び止められた。


「ちょっと話があるんだけどいい?」


え…私に話?

何だろう…遣都さんのこと?

それとも卓人さんのこと?

チラッと澤村さんを見ると、目の下には隈が出来、心なしか少し痩せたようで、思わず目を見張った。

私は素直に頷くと、歩き出した澤村さんの後をついて行った。


メインストリート沿いにあるチェーン店のカフェは、仕事帰りのOLやカップル、大学生でほぼ満席だった。

2人がけのテーブルに座ると、澤村さんは煙草に火をつけた。


「あ…灰皿…」

「大丈夫。これあるから」


そう言って、携帯灰皿をテーブルに置いた。



< 203 / 251 >

この作品をシェア

pagetop