オアシス・カフェ〜三人のプリンス〜

それから年が明け、大学の合格発表の日。

合格したことを報告しに、穂花が一人暮らしをするアパートに向かった。

もともと待ち合わせしてた時間より、一時間早く穂花のアパートの前に着いた。

穂花の驚く顔を想像しながら、階段を登る。

あいつ、合格したって言ったら何て言うだろうか。

春からは大学で会える。

絶対に、喜んでくれる。

緩む口元を必死に閉じながら、最後の階段を上がると、穂花の部屋からあの男が出てくるのが見えた。


『ごめんね、まだこんな早い時間なのに』

『いいんだよ。弟さんの合格発表の日だろ?受かってるといいな。また連絡するから』

『ええ、待ってるわ』


二人は、人目もはばからず、別れ際に濃厚なキスを交わした。


なんだよ、これ…

弟ってなんだよ…

従兄弟なんて、やっぱり嘘だったんだな…

あの涙も全部…嘘だったんだ…


俺は、足音も気にせず階段を駆け下りると、そのまま振り向きもせずにその場を後にした。

それっきり、穂花とは縁を切った。

俺はあれ以来女を信じなくなった。


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