オアシス・カフェ〜三人のプリンス〜
◇狼と彼女

その日の夜。

卓人さんと同じ時間にバイトを上がった私は、さっきのお礼が言いたくて話し掛けるタイミングを窺っていた。だけど…

シーーンッ。

二人だけのスタッフルームは不気味なほど静まり返り、やけに居心地が悪い。

多分、そう感じてるのは私だけだろうけど…

卓人さんは、いつもの通り私なんて気にも止めずに帰りの支度を進めている。


ああ!もう!私の意気地なし‼︎

“さっきはありがとうございました”

たったその一言なのに、なんでなかなか言えないの⁉︎

早くしないと帰っちゃうのに…


私は卓人さんにバレないように深呼吸をして、気合いを入れた。

そう意気込まないと、卓人さんに話し掛けるなんて到底無理な話で。

なぜなら、初日から必要以上に近付くなって忠告されちゃったし…

それ以前に、あの漆黒の瞳と目を合わせて正気でいられる自信なんて全くないから。


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