結婚の賞味期限 人生の消費期限【完】
そして、夫として僕は本当に頼りなかっただろう。

突然父親になるという重責を何とかこなそうと頑張った結果、

逆にそれに振り回されてしまって、

ひなさんの抱える色々な不安な気持ちに

なかなか気が付いてあげられなかった。


僕は入籍と同時に、小学校は同じになる様に

学区内で引っ越しをしようと言った。

お互いの家に5人家族が住むのは狭いから…

というのは表面上の言い訳。


僕は彼女の家にこのまま住み続けたくなかった…

娘の日常生活の事を考えると、本当はそのままあの家に住むことが

慣れ親しんだ環境だから最善なのだろうが…

でも、それはどうしても嫌だった。


あの家は彼女が襲われた所…

あのまま永遠にいなくなってしまったかもしれない、

そんなところに住み続けるなんてできなかった。


またいつアイツが来るかわからないし…

それは娘達にも危険が及ぶことだから…

新しい家で、何もかもリセットして真新しい気持ちで家族になりたかった…

僕のわがままだった。


そして引っ越すとき、子ども達のものはそのまま持って行き、

あのベッドを含むひなさん自身の家具を自ら処分すると言った。

お気に入りのデスクや、ドレッサー、チェスト等…

それが僕への気遣いだとわかり、彼女も新しい気持ちで

僕と家族になろうと前向きな気持ちでいることがうれしかった。
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