結婚の賞味期限 人生の消費期限【完】
何かに囚われたようにその場に固まって動けなくなった。


でも…

逃げていても仕方がない。私は意を決して携帯に手を伸ばし、メールを開く。


『俺のひな。お前には俺が必要だ。そうだろう?

いつでも、いつまでもここから見ているよ…

その時が来たら連れ去りに行くから、それまでは我慢してて…』


あの人は最終的に私のアパートに押し入って刃物を振り回した。

その時みずき君が飛び込んできて渾身の想いで追い出してから…

本当にあれっきりで、何年もの間メールも電話もなかった。

私の中でもあの時あの人との事はすべてが終わった。

結局あの後、転勤ではなく退職したと噂でも聞いていたから…

それからの所在は全く知らなかった。


この頃は、毎日が忙しく満たされていて、

あの人の事を思い出すことはほとんどなかった。

たまに、断片的に黒い過去に引き戻されることはあったが、

そういう時、そばにいるみずき君が何も言わず優しく包み込んでくれて、

黒い記憶も段々と記憶の狭間に消えていっていた。


それでも一度は愛した人、その後の事が気にならないと言ったらうそになる。

でもそれは気持ちが残っているという意味ではなく、

できる事ならどこかで誰かと幸せであって欲しいという

ただそれだけのものだったが…


まだこの人は私の人生に関わってくるのだろうか?
< 56 / 69 >

この作品をシェア

pagetop