毒舌に惑わされて
全然そんなラブラブ振り見せてなかったはずだけど、どこをどう見たらそんな解釈になるのかな。

男と女が一緒にいただけで、恋人同士に見えるのかもしれない。


「あの人は会社の後輩なだけ」


「そう? 大倉を振ったというから、彼に決めたのかと思ったけど、違うんだね」


「違うよ。そういえば、大倉くんはここに来ているの?」


大倉くんには全然会ってない。ここに来れば会うかと思っていたけど、全然会わない。


「うん、たまに来てるよ。莉乃ちゃんは週末じゃなければ来ないから会わないのかもね」


「うん、そうかもね」


置かれたジンライムをひと口飲む。さっぱりとした味が喉を通っていく。


「いらっしゃい…おー、噂をすればだね」


「あー、大倉くん」


前より髪が短くなった大倉くんが入ってきた。


「莉乃ちゃん、久しぶりだね。元気だった?」


ごく自然に私の隣に座り、マスターからおしぼりを受け取っていた。
< 149 / 172 >

この作品をシェア

pagetop