毒舌に惑わされて
確かに今は最悪だ。


「何でだよ? 何のために俺は振られたわけ?」


「大倉さんが振られたことに、俺は関係ないでしょ? でも、こんなわけの分からない女よりももっといい女がいますよ」


「莉乃ちゃんはわけ分からなくないし、元気で優しくて、いい子だよ」


「へー、優しくて、いい子ねー」


今日の聖也はいつになく不機嫌だ。こんな聖也に会いたくなかった。やっぱり来るんじゃなかった。


「何だよ、その言い方。お前の方が余程わけ分かんないな。ね、莉乃ちゃん?」


私は同意して、コクコク頷いた。

大倉くんも聖也を分かりづらいと思うんだ。聖也を理解出来ないのは私だけじゃない。


「まあ、聖也は言葉が足りないとこがあるし、配慮に欠けるところもあるよな。でも、コイツは優しいヤツだよ。それに頼りにもなるよ。身内びいきかもしれないけどね」


テーブル席を片付けて、戻ってきたマスターが私たちの会話に加わる。

分かりづらい聖也は、優しさも少しひねくれているように思える。不器用というか…。


「不器用…」

ポツリ呟くとマスターが嬉しそうな顔を見せてきた。
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