毒舌に惑わされて
「どうも、こんばんはー」


「あ、どうも」


聖也の後ろからにこやかな男が現れた。聖也の大学時代の先輩で、大倉祥司(おおくらしょうじ)と名乗ってきた。聖也に負けずとイケメンだが、与える印象が全然違う。

柔らかく優しい雰囲気を持つ大倉くんは、爽やかな王子系なイケメンだ。


「おい、莉乃。鼻の下が伸びてるぞ」


「は? そんなことないわよ」


大倉くんと好きな食べ物の話で盛り上がっていると不機嫌な顔をした聖也が失礼なことを言ってくる。

マスターと話していればいいのに…あれ、マスターはどこ?

テーブル席に立つマスターを見て、ため息をついた。まあ、マスターだって聖也の相手をするほど暇じゃないわよね…。

仕方ない、聖也もまぜてあげよう。


「ちょっとトイレ」


まぜてあげようとした矢先、聖也はトイレに向かった。


「ねえ、莉乃ちゃん」


「ん? なあに?」


大倉くんも年下だけど、私を女の子扱いしてくれて、ちゃん付けで呼んでくれる。なんだか嬉しいな。


「来週の土曜日、二人で遊ばない?」
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