毒舌に惑わされて
言われていることが分からない私は首を傾げたまま、ますますキョトンとする。


「あー、もう!その顔がヤバいんです。俺、このままだと襲いかねますので、今日は帰りますね!」


「ええっ? ちょっと、待って!」


野村くんは、私が呼び止めるのを聞かないで、マスターに1万円を渡して、早々と出て行ってしまった。

私は野村くんの急ぐ姿に唖然と立ち尽くすしかなかった。


「莉乃ー、こっちにおいでよ」


立ち尽くしていた私は葉月に呼ばれて、カウンター席に移動する。野村くんが帰ってしまった以上、1人でテーブル席に残る意味はない。

テーブル席に1人では寂しいし。


「はい、ここに座って」


葉月が1つ席をずらしたので、私は葉月と聖也に挟まれて座ることになる。


「とりあえず、莉乃ちゃんはマティーニね」


マスターが私の前にグラスを置く。


「莉乃ったら、こんなに強いの飲んで大丈夫なの?」


葉月が驚いていた。


「まあ、この前も飲んでいたし、問題ないだろ? 飲んだ後はどうなるか分からないけどな」
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