毒舌に惑わされて
「ほら、1人でなんて無理だろ? ちゃんと自分の状況を把握しろよ。少し重いけど、お姫さま抱っこで連れて行ってやるよ」


はっ? 今、お姫さま抱っこをすると言った?

嫌、この年になってそんな恥ずかしいことされたくない!

体はまともに動けなくても頭はまともに動いているんだから!


「そんなことしないで!普通に歩かせて…」


「分からないヤツだな。普通に歩くと時間かかるんだよ」


ふわっ…体が上に持ち上げられる。


「ちょっと!やめて」


「暴れるな。大人しくしろよ」


「あらー。莉乃ったら、お姫さま気分ね」


聖也にお姫さま抱っこされた私を葉月はやっぱり楽しそうに見ている。


「は、葉月…」


無駄だと分かっていても、救いを求めて腕を伸ばす。


「おい、腕は俺の首に回しておけ。じゃないと落ちるぞ」


「えっ?いやー、落とさないで」


慌てて聖也の首に腕を回してしがみついた。だって、落とされたくないもの。落ちたら痛いもの。


「そうそう、そのままじっとしてろ」


その状態で私はタクシーに乗せられて、30分後に私の住むマンションに到着した。
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