毒舌に惑わされて
必死に反論していると、どこかの駅のロータリーに着いた。


「降りろ」


「ヘ?」


「俺、これから用事があるんだよ。だから、ここからは電車で帰って。帰れるよな?」


家まで送ってくれるものだと思っていた私は唖然とした。


「間抜けな顔してないで、降りろ」


知らない駅で降ろされ、仕方なく電車に乗った。全く最後まで送り届けないなんて、最低な男だ。なんなのよ!


このまま家に帰る気分になれなくて、今夜も『fantasy』のドアを開けた。


「あれ、莉乃ちゃん、デート終わったの?」


何で今日デートだったことをマスターが知っているの?どこから情報が漏れるのか?


「デートって、何で知ってるの?」


「昨日、祥司が来てさ、莉乃ちゃんとデートする!って、叫んでたから」


「昨日?でも、昨日って…」


私は昨日、野村くんと来ていた。野村くんが帰ったあとは、葉月と聖也と飲んでいたけど、大倉くんの姿は見なかった。


「莉乃ちゃんと聖也が帰ってから来たんだよ」


職場の飲み会が終わってから来たらしい。
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