もしも、Ver.1



こんなことなら早めに来りゃよかった。




ジロリと時計を睨む。


…まだかよ。早くしろよ。

そう思っても時間が早まってくれるわけがなく。
稽古も早めに進んでくれるわけもなく。
結局、時計を睨むしかなかった。




「じゃあ、一旦休憩入れます。
ちゃんと水分補給してねー。」


やっと来た休憩の時間。

俺はその声を聞くと同時に携帯を持ち、尚樹達に気づかれない程度に早歩きをして隣の教室に行った。(あくまで、気付かれないようにだからな。)




……うわ。
なんか、緊張すんな。

前に撮影現場からかけた時も思ったけど、やっぱり奈々美に電話すんのは苦手だ。


------------プルルルル、プルルルル


何回かのコールの後に音が途切れた。




「…はい?」


あ、奈々美だ。

なんて当たり前の事を思う。



声、ダルそうだな。






「おう。」

……って何か他にあんだろ!俺!

毎度ながら、自分の会話能力の、なさに呆れる。






「…優斗?」







風邪で弱ってるんだかなんだか知らんが。

可愛すぎんだろ!

くそー。甘えたような声出すなよなぁ。





.
< 10 / 14 >

この作品をシェア

pagetop