恋の賞味期限 愛の消費期限（Ｂｅｒｒｙ’ｓ版）【完】

待ち伏せ

それは以前より、細くなっていて、視線の鋭くなっていたあの人だった。
一瞬絡み合った視線を強制的に逸らせる。

また…
ここで会った。

もう、転勤しているからと…
油断してしまっていた。
どうしてこんな夜中にひとりで出かけてしまったのだろう。

後悔の念がこみあげてきても目の前のあの人は消えてなくならない。
私は意を決して１つしかない出口に向かう。
視線を合わせないように扉を押して突っ切った。

あの人の視線を身体中に感じたが、近づいてくる気配はなかった。

そのまま、急いで家路につく。


コンビニから私の家までは５分もかからないところ。

コツコツコツ…
足早に…
少しでも遠くに…

しかし、いつからなのかさっきまでなかった足音が明らかに後ろから聞こえる。
私は振り向かず突然走り出した。

数十メートル走ったところで後ろ手をグイとつかまれる。

「ひな」

力強い腕とは違って声は弱弱しかった。


しかし、そのままゆっくりと、でも有無も言わさず元来た道を引きずって行かれる。

逃げられるなんて…
間違いだった。

私は、思いっきり叫んでみようとしたが、怖くて声すら出なくなっていた。

そのまま、どこへ連れられるのかもわからずただ歩いて行った。