恋の賞味期限 愛の消費期限(Berry’s版)【完】

私の思い

彼は、私に微笑むと荷物を持って、携帯で電話をする。

「…すいません。佐々木と申します。
○○まで1台お願いできますか?」

「はい。…はい。分かりました」

おそらく代行を呼んだのだろう。

それから電話を切り、玄関に向かって歩き始めた。

私は、突然の展開にどうしていいのかわからないまま、
それでもとにかく、彼を追いかけて玄関に向かう。

「佐々木さん。佐々木さん?」


「なんですか?」

彼が私の呼びかけに足を止めて振り向く。

その顔は少し寂しそうだった。

「まさか、帰ったりしませんよね?」

私は期待を込めて聞いたが、彼の答えは見たままだった。

「いえ。もう代行も呼んだので、じきに来ますから、降りて車で
待ってます。」

それだけ言うと彼は足早に歩き、玄関のノブに手をかけた。

「どうして…どうして言葉にして言わないといけないんですか?」


私は何とか彼にとどまって欲しくてつい、何も考えずに
思っていることを口にしてしまった。

「それは、普通なら当然のことではないんですか?
僕にとってはそれはとても大切な事なんです」

彼は話しながら、ドアを開けて外に出た。

「相良さん。夜分遅くまでお邪魔しました」

彼は私を突然苗字で相良さんと呼び、頭を下げて、
静かにその場を立ち去った。
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