恋の賞味期限 愛の消費期限(Berry’s版)【完】
「ねえ。みずきくんって、子どもの頃どんな子だったの?
兄弟は?」

「僕ですか?母には、おとなしくて…不器用だけどいい子だって。
周りからも、『みーくんはおとなしくてお利口だね』と
言われました。
歳の離れた弟と比べると、性格の違いが余計に際立ったみたいで。
あいつは、慈希(いつき)は器用で、甘えんぼうで
世渡り上手だから…」

「弟さんがいるの?」

「ずいぶん年が離れてますがね」

「かわいかった?」

「いや、あいつはかわいいとかそういうやつじゃない。
周りからは見た目はかわいいと思われているのかもしれないけど…
ずいぶん年下なのに、自由奔放で勝手で何を考えているのか
ほとんどわからない奴だったから…それを見ていると僕は
余計に我慢しなきゃって無意識に思っていたのかもしれない…」



「じゃ、子供の頃から今みたいに辛抱強くて、穏やかな感じ?」

「いやぁ~、それなりですよ。所詮褒められても子どもですから」

「ねえ…みずき君って、本当にストイックだよね。
何事に対しても。
ほとんど怒ることはないし、声を荒げたり、当たったりもない。
いつも穏やかで、よく気が付いて…」

「そんなことはないですよ。あくまでも会社の顔は
外でのものですから。
やはり年齢や経験を考えると僕はまだまだだです。
ただ、相手に感情をぶつけるだけじゃ基本何も
解決しない事が多いと思っているだけですから」

「う――ん。でも勝手な人はたくさんいるよ」

「それを言うなら、僕は充分わがままで充分勝手だと思いますよ。
優奈ちゃんたちがいいって言うからって、
いつの間にか毎週のようにここに押しかけてしまって…」

「そんなことないよ。それは、娘もあんなに喜んでいて、
私も納得の上だから、気にしなくてもいいの」















「でも…」

私の中に、この頃ずっとあった疑念。



「なんですか?」

彼は、頭をかしげて向かい側からこちらを穏やかな目で見る。



私からこんな事を言おうとしてるなんて
どうかしてるって思われるかもしれない。

「う―――ん。でもねぇ」

戸惑う。私は、なんて馬鹿だろう…
伏し目がちになりながら自嘲気味に笑う。

「前も言ったけど、ひなさんの気持ちはひなさんが言わないと
わかりません。
気になっていることがあるなら僕には何でも言ってください」

本当に誠実だなと思う。
そういう言葉を聞くと、男かもしれないが彼はが彼であると
改めて安心する自分がいる。

彼だからこそ、自分の心に会った思いを言葉にして伝えなければいけないのかもしれない…
今まで言えなかったことも、頑張れば言えるのかもしれない。
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