恋の賞味期限 愛の消費期限(Berry’s版)【完】

今手に入らないなら

私は、しばらくそのままリビングで、本を読んでいた。

熱中していると、いらいらした気持ちが
どこかに棚上げされたようで、本の世界に没頭していた。

仕事の本ではなくこの頃読むようになった官能小説。
女性向けの露骨ではなく、切ないストーリー。

寂しい夜に、そんな世界に思いをはせる。
あの人の異動が決まってから以前よりこの手の小説を
読む時間が格段に増えた。

最後は必ず、パッピーエンド。


でも、私の現実にはそんなおとぎ話のようなことは起こらない。
1冊を最後まで読み終え、

ふと時計を見ると3時30分。いい加減寝なきゃもたない。


でも目は妙に冴えて眠りにおちる様子はない。



ここが独身とシングルの違い。
私は冴えた目のまま今日の事を考えて仕方がなく、
寝室の…
あのセミダブルのベッドに戻った。


彼は静かに規則的な息を吐き…
眠っていた。


私は意を決してその隣に滑り込む。
素肌に触れるシーツの感触が気持ちいい。


そして、私は彼を後ろから抱きしめて手を…
伸ばした。









せめてこのくらいは許されるだろうと…

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