恋の賞味期限 愛の消費期限(Berry’s版)【完】

溶けはじめる心

それから、私と彼の関係は一歩一歩進んでいった。

私が彼の手を引くようで、気が付いたら彼が前に
立っていることもあった。

こんなに愛され大切にされるのは…
生まれて初めてだった私。

男性経験はそれなりにあっても、こんな関係は初めてだった。


躰が手に入ればいい…
最初はそんな気持ちだったのに、この頃その気持ちに確信が持てない。
…揺れている。









「ひな。ひなぁ~。名前呼んで?」

私の躰に快感を生みだしながら彼は私の名を繰り返す。

「み…ず…きぃくん?」

「やだ、みずきってよんで」

耳朶を甘噛みしながらそんな無理を言う。

「みぃ…ずぅ…き…」

私は息も絶え絶えに、懇願されてその名をなんとか口にする。

「ねえ、いい?いい?」

彼は私を組み敷いて、切羽詰まった顔をした。

そんなこと、私には答えるつもりはない。
聞かなくても勝手にしたらいい。

「ひながいいって言ってくれなきゃ、嫌だよ。一人は嫌だ。
ひなも一緒」


年下の真面目な彼は、私を気遣ってくれてどこまでも、
どこまでも優しい。






週末になるとそれまでのように子ども達と食事をして
彼はうちに泊まる。

そして、飢えたように何度も私を喰らい飲み込む。
この上もないほど甘く…



貫かれたとき、毎回溢れるように流れる涙の訳は
いまだにわからず、そんな自分に対して…
冷めている私もいた。


私が欲しいのは躰。そう自分に言い聞かせていた。
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