「わかってるってば」
私は、前の会社を退社すると同時にアパートも出た。

「なんだか先・・・越されちゃったよねー。」

隣人たちは、みな惜しんでくれてるのかな。

結構、みんなクリエーターで、それぞれ夢を持ってここで暮らしてきた。

なんか嬉しかった。まさかここから出られる日が来るなんてね。

学校の延長みたいで・・・

本当に女子高育ちの私にとって、このアパートは本当に居心地が良すぎた。

そうそう・・・

隣の部屋の京ちゃんちの冷蔵庫まですっかりお世話になって・・・

私はが紹介されたのは・・・このアパートからさほど離れていないマンション?!

「先生なんだからさ・・・」

アパートより響きがいいからって編集部からのアドバイス。

「ハイハイ・・・」でも、内心胸は高まった。

セキュリティーも良くって

そもそも・・どんな人たちが住んでいるのか?まったくわからない。

安アパートとはそこが違う。

でもなんだか最初はそれがなんとも・・・ぎこちなく・・・

エレベーターに乗るのも緊張してしまったな。


出版社へは2駅ほど。なんて恵まれた環境なの。

古びた雑居ビルだけど、

アンティークなたたずまい。裏路地のちょっとしたカフェにでもなりそうな

なんとも落ち着く空間だった。

「くんくん・・・」毎朝来社すると、コーヒーの香りがたまらない。

次回作品の打ち合わせ・・・

編集長はコーヒー党なのか・・・そんな心地よい香りで私を迎えてくれた。

そもそも、執筆なんて、日々想像との戦い。

基本・・・書きたいことを書いていいっていわれてるけど、

得意不得意?・・・そんな意味での打ち合わせをしていた。

「凛さん・・・最近潤ってんの~?」いきなりくるこんな質問。

「いや・・・まぁ・・・」

「え?どうなの?恋・・・書ける・・・?」

「ハイ・・・」

先生なのに、するどく突っ込まれるのもこの会社の特徴。

案外好きなんだ・・・

基本、攻められ好きな自分がいた。
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