「わかってるってば」
バーの奥に個室が数室。

いかにもVIP室。部屋の前には若い女性が並んでいる・・・

「マジかよ。」若い女と私、きっと同時にそんなこと思ってる?

その冷たい視線やらに・・・まためまいがしていた。

「来て来て・・・」ゆうきはグイグイと私を部屋の中へ連れ込んだ。

「あ~ゆうきくん。」

「おう。」

甲高い妙に聞きなれた声。

「あれ?美穂ちゃん・・・」

私の視線の向こうに見えたのは

そう、出版社でゆうきの同期の美穂だった。

「あれ~・・・凛さんじゃん。」

「うわっ・・・相変わらずね・・・」

美穂のタメ口はなんか鼻につく。

「ゆうきはここでバーテンやってるんですよー。結構人気なんだから」

美穂は自慢げに、ゆうきのことを私に告げた。

ドアの前にいた女性たちは

皆、ゆうきを待っていた。

「ゆうきさ~ん」ゆうきに見つめらると皆、ロックオンされ虜になる。

ゆうきはまさにここではアイドル的存在だったんだね。

毎晩、こんなに女の子に囲まれているゆうき。

彼の入れるカクテルは

マンションでは味わったことのない・・・

魅惑な味。

私も数時間ここにいたら

なんとなく、ゆうきの女ってこと忘れて

彼の一ファンとして

彼の働きぶりにうっとりしてしまうわ。

手際よくカクテルを作り続けるゆうき。

「見てるだけでいいの・・・」

「でもね・・ゆうきくん・・・意外と真面目なんですよ・・・」

美穂は何かと絡んでくる。

「せっかくいい感じだったのに。」フラれちゃいましたし。

「ふーーん・・・そっか・・・」

美穂はクスクス笑いながらそんな報告までしてくれて・・・ご愁傷様ね。

私はグラスを片手にほろ酔い気味で

「美穂ちゃん・・・カッコいいね・・・ゆうき・・・」

「うんうん・・・いいですよねー。やっぱ・・・。」美穂もしみじみ。

美穂はそういいながらも涙を流す・・・

「やだ・・・なんで泣いてんのよ~?」

「ふえーん・・」

気が付いたら、私の頬にも涙が・・・

夜更けのバーで

カッコいい男を見ながら泣く女が2人。

それからというもの、美穂とは心が打ちとけていった。

「凜さ~ん。たまに来てもいいからね。」だって・・・相変わらず上から目線な女。

でも、可愛い・・・

なんと、わたしとゆうきの応援隊長を引き受けてくれた。

「ありがとね」

私はゆうきの仕事上がりをじっと待っていた☆
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