桜色ノ恋謌
今はとにかく恭哉のことを考えて、無駄な疑いを持ちたくないっていうのが本音。

そのためには誰かと騒いで憂さ晴らしをしたいかな?


「で、どう?オフってある?私も友達一人連れてくけど」

「つーかさ、カラオケとかアリかよ?せめてクラブとかにしねぇ?」


いやいやいや!


正統派若手女優の公佳ちゃんを、月島くんが行きそうな怪しいクラブなんかに連れて行けるはずないでしょ!

私だって事務所に怒られるよ、そんなとこ行ったら。


「……ごめん、うちの事務所的にクラブはアウト」

「あ、そ。ま、フツーに合コンもたまにはいいか。俺らは明後日なら夕方から空いてるけど?」


明後日……。

公佳ちゃんの予定も明後日は、1日オフだったよね。私も映画のアフレコがあっただけで、夕方からは空いてるし。


「じゃあ明後日、カラオケに予約入れてもいい?大地くんにも言ってもらえる?」

「俺らが行くのはいいけどさ。相手の友達って一般人?」


いえ、大型若手女優です。


とか言ったら誰かって分かっちゃうよね。


「ううん。業界人」

「ならいいけど。間違っても一般人なんか呼ぶんじゃねーよ。後腐れが鬱陶しいから」


分かってますってば。


アンタ達の本性知ったら幻滅されるだろうしね。


「じゃあお店が決まったら教えるから」

「メール入れといて」

「うん、分かった」



軽く頷いた。



月島くんはすぐいなくなるだろうと私は期待してたのに、その後も長々と居座り続けてくれたものだから、正直かなりうんざりした。


話題は大体が映画の話し。


監督さんの仕事ぶりやスタッフのクセ、それから私が共演した俳優さんと女優さんの、カメラが回ってないところでの何気ない会話はどうだった、とか。



全く意外なんだけど、月島くんは真剣な顔でそういうことを質問してきた。


月島くんがこんな表情してるのを見れば、チャラ男に見えてもそこはやっぱりプロ意識があるんだな、って思う。


こうやって情報収集ってするのか。


ちょっとだけ、月島くんを見直した。
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